比熱測定
断熱型連続法
当社創立者 長崎誠三が開発した測定法です。固体はもちろん、金属の溶融状態、液体、粉体等幅広い測定が可能です。
液体窒素温度(-150℃)から1000℃までの測定が可能です。
比熱容器、エンタルピー、エントロピー、融解熱、変態熱などが測定できます。
【測定原理】
断熱状態において、質量 M´、比熱 C´の試料容器を用いて、質量 M 試料に一定電力Wで連続加熱するとき、ある一定微小温度間隔 Δθ 上昇するのに要する時間を Δt とすれば、比熱は次の式で与えられます。
Cp=W・Δt/(M・Δθ)-M´・C´/M
M´・C´はあらかじめブランク測定を行って求めておきます。
【測定装置】
図1に基本構造を示します。
試料(①)は、試料ホルダー(②)の内蔵のヒータ(⑤)により、定電力 W(ワット)で加熱され温度上昇します。 試料とその外側の断熱容器(③)との間の温度差を検出します。 この温度差がゼロになるように外部ヒータ(④)の電流を制御し、断熱条件を実現します。 温度は試料に挿入された熱電対により検出します。
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①試料 ②試料ホルダー ③断熱容器 ④外部ヒータ ⑤内部ヒータ ⑥断熱制御用熱電対 ⑦スペーサ ⑧遮断板 ⑨ベルジャ ⑩測温熱電対 |

真空理工製比熱測定装置 SH-3000L

真空理工製比熱測定装置 SH-3000M

アドバンス理工製比熱測定装置 SH-3000HT
測定装置 | 測定温度範囲 | 測定雰囲気 |
---|---|---|
真空理工製比熱測定装置 SH-3000L | -150℃~100℃ | 不活性ガス中(N2またはAr) |
真空理工製比熱測定装置 SH-3000M | 室温~800℃ | 不活性ガス中(N2またはAr) |
アドバンス理工製比熱測定装置 SH-3000HT | 室温~1000℃ | 不活性ガス中(Ar) |
【測定例】

真空理工製比熱測定装置SH-3000でのAl-6%MgZn2の比熱

真空理工製比熱測定装置SH-3000でのAl-6%MgZn2のエンタルピー
【参考文献】
長崎誠三,高木豊:応用物理,18,104(1948)
板垣乙未生,青木豊松:東北大学素材工学研究所報,vol.52,No.1,2,p.1(1996)

アドバンス理工製比熱測定装置SH-3000HT型でのサファイアの比熱
DSC法
DSC法(Differential Scanning Calorimetry:示差走査熱量測定法)は、試料を昇温または降温させながら、試料と基準物質の差から熱量を測定する測定方法です。
当社では入力補償型DSC、熱流束型DSCを保有しており、金属や樹脂、フィルムなど様々な材質の測定が可能です。
測定温度範囲は入力補償型DSCが室温~300℃、熱流束型DSCが-20℃~500℃になります。
【測定原理】
入力補償型DSC
独立した試料と基準物質のホルダーにそれぞれ温度センサーとマイクロヒータが付いており、プログラムに従い制御されます。
基準物質と試料の間に温度差が生じたとき、その差がなくなるようにヒータ入力電力が調整され、そのときの入力電力の差をDSC曲線として出力します。

パーキン・エルマー社の内熱式入力補償型DSCの構造図
熱流束型DSC
装置に試料と基準物質を1つの加熱炉の加熱ブロック上で、指定されたプログラムに従い一定速度で昇降温させます。その時の試料と基準物質の温度差を測定し、DSC曲線として出力します。原理的にはDTAと類似していますが、異なる点としては定量的な測定ができることになります。
DSC法での比熱測定の規格
JIS K 7123 プラスチックの比熱容量測定方法
JIS R 1672 長繊維強化セラミックス複合材料の示差走査熱量法による比熱容量測定方法
ASTM E 1269-11 (2018) Standard Test Method for Determining Specific Heat Capacity by Differential Scanning Calorimetry
など
【測定装置・測定例】
入力補償型DSC

PerkinElmer製示差走査熱量計 DSC-7(入力補償型)

PerkinElmer製示差走査熱量計 DSC-7(入力補償型)でのニッケルの比熱
熱流束型型DSC

NETZSCH製示差走査熱量計 DSC3500Sirius(熱流束型)

NETZSCH製示差走査熱量計 DSC3500Sirius(熱流束型)の比熱
DSC種類 | 測定装置 | 温度範囲 | 測定雰囲気 |
---|---|---|---|
入力補償型DSC | PerkinElmer製示差走査熱量計 DSC-7 | 室温~300℃ | 不活性ガス中(Ar) |
熱流束型DSC | NETZSCH製示差走査熱量計 DSC3500Sirius | -20℃~500℃ | 不活性ガス中(Ar、N2) |
レーザフラッシュ法
金属やセラミックのような熱伝導のよい物質の測定に適しています。
オプションの冶具やソフトを使って、薄膜の熱伝導率の測定や多層材の熱伝導率の測定も可能です。
【測定原理】
レーザフラッシュ法は直径 8~10mm、厚さ 0.5~3mmの円盤状試料にレーザ光を照射し、裏面の温度履歴曲線を解析することにより、熱拡散率 α、比熱 Cp を求め、次の式から熱伝導率λを求めます。
λ=α・Cp・ρ (ρ:密度)
また、熱拡散率 α は図1の t1/2(最高温度上昇ΔTmの1/2に達する時間)と厚さ L から求めます。
α=0.1388L2/t1/2
比熱 Cp は、室温は標準試料との比較から求めます。
吸収熱量を一定にするために、グラッシーカーボンの受光板を試料に接着して測定し、図1の ΔT0(試料からの熱損失を指数関数近似によって補正したときの最高温度上昇)を求め、同様にして求めた標準試料のΔT0と比較して試料の比熱を計算します。
高温での比熱は試料表面をカーボンスプレーで黒化処理して測定した高温と室温の ΔT0 を比較計算します。

図1

真空理工製熱定数測定 TC-3000

真空理工製熱定数測定 TC-7000

アルバック理工製熱定数測定装置 TC-9000
測定装置 | 測定温度範囲 | 測定雰囲気 |
---|---|---|
真空理工製熱定数測定装置 TC-3000 | -110~1000℃ | 大気中、真空中、 不活性ガス中(Ar) |
真空理工製熱定数測定装置 TC-7000 | 室温~1300℃ | 大気中、真空中、 不活性ガス中(Ar) |
アルバック理工製熱定数測定装置 TC-9000 | 室温~1300℃ | 大気中、真空中、 不活性ガス中(Ar) |