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時計の進歩 ――振り子時計から水晶時計まで――

「固体物理」2013年3月号掲載

ガリレオ ガリレイが教会堂の天井から吊るされたランターンの振動を観察して振り子の等時性を発見して以来,この原理をはじめとしてさまざまな物理現象が時計に応用されてきた.
この振り子時計は形が大きいので柱や壁に掛けられ,柱時計とか,壁時計とか呼ばれていた.
次に出現したのはテンプ時計である.この時計の心臓部にはテンプと呼ばれる弾み車にひげゼンマイがついており,その回転振動で等時性を保つようにできている.ゼンマイの捲き立てはその回転振動の振幅は大きく,その後だんだんと小さくなるが,その振幅によらず秒針を1単位進ませるために,エスケープという回転棒が付いており,回転振り子が1振動するたびにこの回転棒に当たって次の歯車を1単位進め,それに直結する秒針を1単位進め,さらに歯車の組み合わせで回転速度を60分の1に落として分針を,さらに60分の1にして時針を動かす仕組みになっている.このテンプ時計は形が小さいので,置き時計から懐中時計や腕時計として広くかつ永く使われてきた.
次に作られたのは水晶時計である.この時計の等時性は小さな水晶でできた音叉の振動で保たれている.水晶は大きな電歪(でんわい,電気歪み)を持つのでこれを利用して自励振動を起こさせ,この振動を逓減して歯車を動かす仕掛けになっている.水晶は熱膨張が非常に小さいので温度変化の影響を受けにくいという利点を持っている.
筆者の持っている腕時計は水晶時計で,正確に動くばかりでなく,深夜12時には気象台の電波信号を受けて,時刻を標準時に合わせてくれる.

(近角聡信)

椅子用こたつ ――頭寒足熱の理にかなう――

「固体物理」2013年2月号掲載

我が家では寒くなると,椅子用のこたつに足を入れて寒さを凌いでいる.
こたつは市販の座敷用の電気こたつを買ってきて,脚だけを約70cmの長いものに取り替えた.こたつの上部は1m×1mの木の枠組みでできていて,その裏に大きな赤外線ランプがついていた.これは火力が強過ぎるので,ほのかな熱線を出す電熱板に取り替えた.上から掛ける蒲団の代りに,大きな薄い厚めの布を3枚重ねて掛けてある.こたつの内部から熱線がもれないためである.布の端は絨毯敷きの床にまで達している.要するにこれはこたつ内部を縦横無尽に飛び交う熱線で満たしておこうという考えで,こたつ内部の空気を温めるという従来の考えとは違うのである.安楽椅子に腰掛けて膝までこたつに足を入れると,足は温まり頭は冷えて,頭寒足熱の理にかなって快適である.
暖房の仕方は家によって,また地方や国によっていろいろあるが,筆者が自宅を建てる時に,設計家に頼んでオンドルを設置してある家を見せてもらったことがある.穏やかで気持ちがよく経済的な暖房法だと聞いたことがあったからである.これは壁を厚くしてその中に煙道を作り,その中をストーブの熱い燃焼ガスを通すという方法である.その家に行ってみると,その家の主人はしきりにオンドルの効果を自慢していたが,床には小さな石油ストーブが置いてあった.
要するにオンドルは年間を通して気温が生活温度以下であるような厳寒地方に適した暖房法で,暑くなったり寒くなったりする中緯度の地方には不適当な暖房法であることがわかった.結局,我が家では石油ファンヒーターとエアコンで室温を23℃に保ち,一休みする時にはこたつで暖まっている.

(近角聡信)

半金属 ――金属でもなく,絶縁体でもない――

「固体物理」2013年1月号掲載

ビスマス(Bi),アンチモン(Sb),ヒ素(As),グラファイト(C)等の元素は電気伝導帯にある電子や正孔などの電気伝導の担い手の数が少ないため金属でありながら電気伝導率が非常に低い.このような金属を半金属という.
このような特性を逆手に取ってうまく応用されているのがグラファイトである.直流電動機は電車の動力源をはじめとしてさまざまな機械に使われているが,回転子には向きを変えて多くの巻線が巻かれており,それぞれの巻線の端は整流子という回転軸の周りに並べられた金属片に接続してある.回転子は界磁の生じる一様な磁界の中で回転するようにできており,整流子はその中で最大のトルク(力のモーメント)を生じるコイルにだけ電流を送るように接続されている.この端子に電流を送るためにこれと接触する接触子としてグラファイトが使われるのである.その理由はグラファイトは半金属であるため電気抵抗が高く,二つの端子にまたがって接触して二つの巻線を短絡(ショート)してもそのために接触子に流れる電流が少ないことが挙げられる.その上グラファイトには潤滑性があるので,この目的に適している.この接触子は普通カーボンブラシと呼ばれている.
ビスマスとアンチモンは鉛と混ぜて活字合金を作るのに用いられる.その組成がPb 85 %,Sn 4 %,Sb 11 %の合金が表面張力が小さく,紙型に流し込んだときに型が崩れない.
残るヒ素は毒性が強いので昔はねずみ捕りなどに使われた.

(近角聡信)

磁歪振動子 ――超音波発振器として使う――

「固体物理」2012年12月号掲載

 強磁性体は磁化すると,わずかながら長さが変化する.これを磁歪(じわいまたは磁気歪み)という.この現象は磁歪振動子として超音波の発振器に使用されている.
 その主な用途は魚群の探知である.この機器を舟から海中に吊るして海中に超音波を送ると,この音波は海中をあまり減衰せずに進み,もし魚群があれば,それに反射して帰ってくる.その反射波の強さと方向を検知して,魚群の大きさと位置を知ることができるのである.
 超音波は空気中ではすぐに減衰してしまって遠くまで伝わらない.そのわけは“のれんに腕押し”のたとえのように,そのエネルギーが媒体に十分に伝わらないからである.このことを“負荷不整合”(Inpedance Mismatching)という.これに反して超音波は水に対しては整合性がよく,能率よくそのエネルギーを海中に伝えることができるのである.
 超音波はまた非破壊検査にも使われる.一様であるべき固体材料の内部に疵がないかどうかを検査するのに,その材料の一端から内部に向かって超音波を送り,反射波の有無でそれを知ることができる.また疵の様子を画像化するためには,超音波を細いビームとして送って左右に掃引し,それと同じ周期に同調したブラウン管の明るさを反射波強度で変調すれば,疵の形状を知ることができる.超音波はまた医療にも使われる.体内の癌などの異物を検知するのに便利である.X線でも同様な検査をすることができるが,強力なX線は人体に有害であるのに対して,超音波はまったく無害なので安心して使えるという利点がある.

(近角聡信)

高性能蓄電装置 ――古くて新しい――

「固体物理」2012年10月号掲載

 電気を蓄める装置には,乾電池や蓄電池がある.乾電池は内面を亜鉛メッキした金属製の容器の中心に炭素棒を置き,その間に塩化アンモニウムの液に添加物を加えて糊状にした物質で満たした構造を持っている.炭素と亜鉛との接触電位差の違いによって,両極の間には1.5ボルトの電位差を生じる.電流を流すにつれて,亜鉛が+イオンとして溶液中に溶け出すから,メッキはだんだん薄くなり,遂になくなれば電池の寿命は尽きてしまう.
 鉛蓄電池は,酸化鉛PbO2を陽極に,Pbを陰極にして,その間に硫酸H2SO4を満たした構造を持つ.両極の間には,約2ボルトの電位差を生じ,外部回路を閉じると陽極からは鉛がPb2+として溶液中に溶け出し,陰極には(SO4)2−が付着して電子が2個溶液中に放出され,回路に電流を供給する.この過程は可逆的なので,外部から電流を流し込めば充電することができる.
 これらはいずれも電解質を使い,構造も複雑であった.ところが最近,ハイテクを使って,金属薄膜の間に誘電体薄膜を挟んだコンデンサーを蓄電装置として使う試みがなされているようである.その電気容量を増すためには誘電体膜を薄くすればよいが,あまり薄いと絶縁が破壊するおそれがある.また,出力電圧を一定に保つためには,コンデンサーをグループ分けして,使用しているグループの電圧が下がったらトランジスターを使って次のグループに切り換える必要がある.
 この装置は化学反応を伴わず,電子の移動だけで作動するから,消耗することがない.充電も放電も簡単である.その代わり,扱いを誤ると,発熱や爆発を起こす危険があるから,対策を講じておく必要がある.

(近角聡信)

家庭の暖房法 ――石油ファンヒーターの効用――

「固体物理」2012年9月号掲載

 我が家では,居間の暖房には石油ファンヒーターを愛用している.この石油ストーブは自動温度調節機能を具えている.たとえば,室温を23℃に設定しておくと,天井近くに固定してある検知器がこの温度以上になると,石油の供給を絞って火力を弱くする.石油は屋外に設置した石油タンクから細い銅パイプを通して室内のストーブに供給される.
 このストーブには燃焼炉が2個並んでついており,普段は右側の1個だけが作動しているが,厳寒期には両者とも点火し,強力な暖房を行う.それぞれの炉には炎が当たる位置に金網が張ってあり,炎で熱されると,赤熱されて熱線を放射し,室内の遠くまで温める.
 燃焼ガスは電動ファンによって強制的に屋外に排出される.その煙突は屋外に出ている部分が水平で,しかも長さが約20 cmと短い.それは,普通のストーブと違って給気をファンを回して行うので,煙突による吸気作用を利用する必要がないからである.しかもその煙突は二重になっており,熱い排気ガスが冷たい外気の給気ガスと熱交換を行うようになっている.この煙突はブリキの金属製である.それをゴムで作った製品が出回ったことがあった.ゴムは熱に弱いため,使用中に孔が空いて室内に排気ガスが洩れ,住民が一酸化炭素中毒になるという事故を引き起こした例があった.製品の開発には構造の工夫の他に,材料の物性についての知識も必要であることをこの例は物語っている.
 室内に置く手軽な石油ストーブは,室内の空気で石油を燃やし,排気を室内に放出するため,次第に室内の酸素が少なくなり,不完全燃焼を起こして一酸化炭素を放出するようになるから,注意を要する.

(近角聡信)

染色のマジック ――泥から綺麗な色が現れる――

「固体物理」2012年8月号掲載

 染色とは,糸や布に色を付けることであるが,染色した製品は何度も水に晒しても脱色しないようにしなければならない.そのためには単に色素を繊維に付着させるだけではだめで,繊維そのものを発色させなければならない.これが染色という技術である.
 繊維は有機化合物(炭素化合物)であるが,その中の環状化合物で綺麗な色を呈する化合物がある.このような塩基を持った化合物を発色団という.染色とは,このような発色団を繊維の中に作り出す技術である.このような発色団に白色光が当たると,その色の補色(または余色ともいう)の光を共鳴吸収するために,吸収されずに残ったその色を呈するようになるのである.
 最も簡単な染色は,好みの色の染料に白色の材料を浸し,温度を上げて好みの濃さになるまで煮る直接染色である.白色の繊維は染料の中の発色団と結合して一様な色に染まる.
 もし生地の中に染料と結合する塩基がない場合には,予めその塩基を持つような煤染剤に一度浸してそのような塩基を持たせた後に染色する間接染色法もある.このような煤染剤は染め上がりの綺麗な色と似ても似つかぬ泥のような色を持っていることもある.このような場合,泥のような煤染剤を洗い流した後に綺麗な染め上がりの生地が現れるので,マジックのように感じられる.
 また染上がりの色をより赤っぽい色に変える深色団と呼ばれる塩基を含む液に浸すことによって色彩を変えることもできる.またそれとは逆に色彩を青い方にずらす浅色団という塩基を含む液に浸すことによって,染め上がりの色をより浅い青っぽい色に変えることもできる.

(近角聡信)

ガラスの割れ方 ――なぜ鋭い破片になるのか――

「固体物理」2012年7月号掲載

 窓の板ガラスにしても,食器のコップにしても,ガラスは割れると直線的なひびが入って鋭い破片を生じ,それで手を切って怪我をすることがある.
 ガラスが割れるときには,割れ目の先端に応力が集中している.これはその部分をシュリーレン法*という光学的手段を使って観察すればわかる.
 この応力の集中の度合いは,その材質が硬いほど著しい.それは力のかかる部分が梃子となって力を伝えるからであって,梃子が軟らかくては力は伝わらない.
 次になぜ割れた破片が鋭い刃物になるのかを考えてみよう.
 それは,ガラスは非晶質であって方向性がないので,外力が生じるずれ応力の分布通りに割れ目が進行するので,生じた破片はすべて先端が鋭いのである.
 危険なのは破片の先端ばかりではない.破片の側面も鋭い直線になっており,この縁に沿って指を触れると,ナイフで切ったような深いきずを作ってしまう.
 このような危険を避けるために強化ガラスが作られている.それには,熱的強化と化学的強化の2種類の方法がある.熱的強化の場合には,厚い板ガラスを製造するときに,赤熱した板ガラスを冷却する際に上の表面に一様に冷風を吹き掛けて急冷するのである.その結果,上の表面は下の層から強い圧縮応力を受け,下の層は強い引っ張り応力を受けることになる.したがってこれ以下の外力では破壊は始まらない.化学的強化はガラス中のNaイオンの一部をイオン半径の大きいKイオンに入れ替えて内部応力を増す方法である.

* 近角聡信:続日常の物理事典(東京堂出版)「陽炎を見る」

(近角聡信)

炭素繊維 ――軽くて丈夫――

「固体物理」2012年6月号掲載

 炭素は原子番号6の元素で,原子量12.01の軽い元素である.隣接する炭素原子とは強固な共有結合をするので,種々な丈夫な固体を形成する.典型的なのはダイヤモンドで,これは炭素が3次元的に結合したもので,最も硬い固体として知られている.炭素が2次元的に結合したのはグラファイトで,これは強固な2次元構造を持つ.この物質は潤滑剤として使われ,機械の回転軸を支える軸受けの中で潤滑油と併用して使う.潤滑油だけの場合,重圧が加わると,軸と軸受けとが金属結合して,俗にいう噛んでしまうからである.グラファイトの面内結合は強固で,軟らかいのは面間結合が極く弱いからである.グラファイトはまた黒鉛とも呼ばれる.鉛のようによく伸びるからだろう.しかし,この黒鉛の板を糸鋸で切ろうとすると,糸鋸の刃はたちまち摩耗してツルツルになってしまう.

 炭素繊維は炭素を繊維状に成形したもので,これを強力な接着剤で固めたシートは軽くて丈夫で,これまで航空機の機体材料として使われていたジュラルミンと比べてもはるかに優れた材料なのである.また化学的にも安定である.航空機ばかりでなく,自動車などの車体材料をはじめとして,テニスのラケット,ゴルフクラブの軸材料などの日用品にも使われている.

 炭素繊維を作るには,レーヨンやポリアクリルニトリルなどの繊維を不活性気体中で加熱分解して作る.これを機械的,熱的,化学的に丈夫な接着剤を使って接着成形するのである.また出来た製品を中を中空にして,構造的にも軽量化を計った方がよいことはいうまでもない.

(近角聡信)

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