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技術紹介


第5回  熱線法による固体・液体・粉末の熱伝導率測定
非定常・熱伝導率測定、「熱線法」とは
熱線法による熱伝導率の測定は、無限大を仮定した試料の中に直線状のヒータをおき、それに一定の直流電流を流したときのヒータ自体の温度上昇から試料の熱伝導率を求める方法をいいます。
この方法は非定常法の絶対測定法で標準試料は不要ですが、得られた測定値が妥当かどうかをチェックするために、熱伝導率が既知の標準試料は必要です。測定に要する時間は比較的短時間です。試料は均質であればよく、またヒータ線と測温熱電対を試料の中心に密着して挿入できる、ある程度の大きさがあればよいだけです。
固体、粉体、液体の区別なく測定ができ、固体から溶融して液体状態になるまでの測定が可能です。
また断熱材などの低圧下での測定や水分を含んだ試料の熱伝導率測定も可能です。
熱伝導率の測定範囲は0.005〜10W/(m・K)、測定温度は−190〜1200℃、圧力範囲は1〜10−5Paです。

熱線法の測定原理
図1に示すように2枚の試料の間に挿入された金属細線(ヒータ線)に一定の直流を通電すると、発生したジュール熱は試料内に放射状に拡がります。
いまヒータ線に単位長さの放出熱量H (W/m)を一定に与えたとき、時間t 1 からt 2までのヒータ線の温度上昇Δθ(K)は次式で表されます。

   Δθ=0.1833(H /λ)log(t 2/t 1)

ここでλは試料の熱伝導率(W/(m・K))で、試料温度が温度上昇中でも変化せず一定と仮定しています。
時間tの対数を横軸に、温度上昇Δθを縦軸にプロットすると直線が得られ、この直線の勾配から熱伝導率λが求められます(図2)。

図1 熱線法の原理図


図2 熱線の温度上昇(試料:岩石,H=0.16W/cm)

液体試料の熱伝導率の測定
一般に液体は加熱により対流を生じやすく、熱伝導率の測定は困難とされています。
当センターでは対流の影響をできるだけ少なくするために、図3に示すようにガラス細管内にヒータ線と熱電対を入れた測定センサを使用し、できるだけ対流の影響をさけるために短時間のうちデーダを取るように工夫し、液体の熱伝導率の測定を行っています。
表1はトルエンを試料として供給電力H(W/cm)を変えたときの熱伝導率の測定値です。
供給電力が0.0018〜0.0049W/cmの間でほぼ一定の熱伝導率値が得られ、文献値とよい一致を示しています。


図3 熱線法の液体試料用センサー

表1 トルエンの熱伝導率(20℃)
 
供給電力(W/cm) 熱伝導率測定値(W/(m・K))
0.00186 0.133
0.00322 0.135
0.00495 0.135
0.00726 0.117
0.00969 0.122
0.01304 0.146
文献値
0.132 熱物性ハンドブック
0.136 化学便覧


減圧下の断熱材の見かけの熱伝導率の測定
低密度のセラミック・ファイバー断熱材による熱伝達機構は、セラミック固体のみの単一の熱伝導と異なり、内部に多量に含んだ気体による熱伝導、対流やふく射などが加わった複雑なものとなります。
このような熱伝達に基づく熱伝導率は、見かけの熱伝導率といい、断熱材の見かけの熱伝導率λappは次式で表されます。

   λapp=λg+λcv+λs+λrc+λrt+λgi

ここで、
 λg:含有気体の熱伝導の寄与
 λcv:含有気体の対流の寄与
 λs:ファイバー固体の熱伝導の寄与
 λrc:ファイバー間のふく射による寄与
 λrt:高温面から低温面へのふく射による寄与
 λgi:含有気体とファイバーとの相互作用による寄与

これらの寄与の中で最も大きいのは気体の熱伝導です。
したがって気体を除いたファイバー断熱材の見かけの熱伝導率は大きく低下することになります。
図4は、見かけの密度ρ=0.153のセラミック・ファイバー断熱材の圧力と見かけの熱伝導率の実測データです。
この断熱材は真空下の見かけの熱伝導率は、常圧の値の数分の1以下のスーパー断熱材になります。


図4 セラミック・ファイバー断熱材(ρ=0.153)の圧力〜見かけの熱伝導率の実測データ


出典:金属,Vol.74 No.6 (2004), pp.102-103.

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